日本と世界の「ゲーミフィケーション」
ゲーミフィケーション(gamification)ということばがあります。ひと言でいえば、「ゲーム*1の要素をさまざまな活動の動機づけに活かすこと」といったところでしょうか。インターネットで調べてみると、以下の説明がありました。
Gamification - Wikipedia, the free encyclopedia
Gamification primarily refers to a process of making systems, services and activities more enjoyable and motivating.(筆者意訳:ゲーミフィケーションとは主に、システムやサービス、活動の形成をより楽しく、動機づけるプロセスを指す)
最近、ゲーミフィケーションについて考える機会がありました。このことばについて、日本では数年前から教育論や人的資源論などの分野で注目を集めるようになったと記憶しています。いっぽう、最近は「ゲーミフィケーション」ということばに触れることが以前よりも減った気がします。
そこで、「ゲーミフィケーション(Gamification)」ということばを調べてみると、Google trendsで興味深いグラフにたどり着きました。以下では、検索範囲と検索ワードを調整した3点のグラフをご紹介します*2。
はじめに、検索範囲を日本に限定して、カタカナ表記の「ゲーミフィケーション」と英単語の「Gamification」を調べた結果が以下の図1です。青い線がカタカナ表記、赤い線が英単語です。
図1:日本における「ゲーミフィケーション/Gamification」検索状況
( 出典:Google trends)
カタカナおよび英語の表記、いずれも2011年7月から値が増加しています。カタカナ表記は2012年1月を頂点として、2012年7月以降は減少する傾向にあります。2015年9月の時点で数値が11なので*3、最盛期(2012年1月)に比べておよそ1/10まで落ち込んでいることになります。なお、日本では英単語の「Gamification」をあまり検索しないようです。
つぎに、検索範囲を世界として、英単語の「gamification」を調べた結果が以下の図2です。
図2:世界における「Gamification」検索状況
( 出典:Google trends)
2010年10月から数値が増え始めています。2010年10月から頂点の2014年2月までは増加する傾向にあり、2014年3月以降は微減もしくは横ばいといった印象です。2015年9月の時点で数値が77となっています。
さいごに、検索範囲を世界として、英単語の「Gamification」 とカタカナの「ゲーミフィケーション」を比較したものが以下の図3です。カタカナを使う言語は日本だけなので、こうすることで世界と日本の比較ができます。青い線が英単語、赤い線がカタカナ表記です。
図3:世界における「Gamification/ゲーミフィケーション」検索状況
( 出典:Google trends)
日本と世界とでは異なる動きをしていることがわかります。日本では2012年に最盛期を迎えていますが、世界では、最盛期の2014年まで増加する傾向が続いています。また、日本では2012年から減少傾向にあるのですが、世界では最盛期の2014年以降も増減をくり返しています。
以上の結果より、日本の目線と世界の目線でいくつか議論のポイントがあるかと思います。たとえば、日本の目線ではゲーミフィケーションが一時的なブームだった可能性があること、日本では根付かなかったとしたらその原因、ゲーミフィケーションにかわることば(概念)の有無、などが思いつきます。また、世界の目線では成功モデルや根付いた文化圏の有無、最新の研究成果、などが思いつきます。
今回、調べた結果はインターネットでの検索、特にGoogleの検索結果が元になっています。そのため、別のデータ(たとえばYahoo!)を使うことで違う結果が出るかもしれません。また、新聞や雑誌の記事、書籍などを調べてみると、新しい気づきがあるかもしれません。
日本はスポーツやコンピュータ・ゲームなどが盛んな国のひとつです。ゲーミフィケーションに限らず、日本ではゲームを通じて得ることができる知見も多いのではないでしょうか。今後の動向に注目したいと思います。